元生産技術者が教える、塗布装置の仕様書の読み方

こんにちは、三宅健司です。
自動車部品メーカーの生産技術課に17年いて、シール材や放熱材を塗る工程を担当してきました。

ディスペンサのカタログには、たいてい仕様表が載っています。
ただ「数字は並んでいるけれど、どこから見ればいいのか分からない」という相談をよく受けます。

この記事では、私が仕様書を手にしたときに実際に見ている順番を紹介します。

最初に見るのは「使用可能粘度」

粘度の単位はmPa·sで、数字が大きいほど流れにくい液体です。
感覚をつかむなら、マヨネーズが目安になります。

農林水産省のJAS規格「ドレッシング」は、マヨネーズを含む半固体状ドレッシングを「粘度が30 Pa・s以上のもの」と定めています。
mPa·sに直すと30,000以上です。

何℃で測った数字かを確かめる

粘度は温度で変わります。
ジャスコエンジニアリングのPEG400の粘度測定事例では、10℃で278 mPa・s、40℃で128 mPa・sでした。
冬の朝と夏の午後で同じ材料の出方が変わるのは、このためです。

かき混ぜると柔らかくなる材料もあります。
JIS Z 8803「液体の粘度測定方法」は、こうした液体を非ニュートン液体と呼び、ずり速度に応じて異なった粘度を示すと説明しています。

材料のデータシートにある粘度も、どの条件で測った数字なのかを確認しておきましょう。

吐出量と耐圧で「出せるか」が決まる

吐出量範囲は、1回に出せる量です。
上限ばかり見られがちですが、私は下限も見ます。
少量を正確に置きたい工程では、下限が合わないと使えないからです。

高粘度の材料では、ポンプの耐圧も欠かせません。
硬い材料を押し出すほど、ポンプの中には高い圧力がかかります。
フィラー入りの材料を使うなら、ポンプの摩耗への対策が書かれているかも見ておきます。

耐圧や摩耗対策の書かれ方は、高粘度・高フィラー材料の塗布に対応したP-FLOW Hタイプの製品ページが分かりやすい例です。
次の章で、この機種の仕様表を読んでみます。

実際の仕様表で読んでみる

ナカリキッドコントロールのP-FLOW Hタイプの仕様は、次のとおりです。

項目表記読むときの見どころ
使用可能粘度1~1,050,000mPa・sJASのマヨネーズ基準の35倍まで
吐出量範囲0.4~7.5ml/shotプランジャ径で変わると注記あり
ポンプ内の耐圧19.6MPa高粘度樹脂を押し出すための数字
エア源0.5MPa(ドライエア)工場のエア設備で足りるか
電源Φ3 AC200V・3kW三相200Vの電源が必要
本体重量500kg床の強度と搬入経路

計量ポンプには特殊な材質を使い、耐摩耗性を高めているそうです。

ただ、使用可能粘度を何℃で測ったかまでは、仕様表に載っていません。
カタログの紙面には書ききれない部分なので、自社の材料で試すのが確実です。
同社もテストルームで実機テストを受け付けています。

テストでは、次の点を見ておくと安心です。

  • 冬と夏を想定した温度での吐出量
  • 続けて出したときの量のばらつき
  • 糸引きや気泡が出ないか

まとめ

仕様書は、粘度、吐出量と耐圧、設置条件の順に読むと迷いません。
粘度は数字そのものより、測った条件を確かめることが大切です。

最後は、自社の材料で実際に出してみるのがいちばんの近道です。